第9章 風柱と那田蜘蛛山
「師範としてとは……胡蝶もなかなか酷なことを言ってくれるな」
更紗の無事を知り杏寿郎は目の奥が熱くなったが、次の言葉に違う意味で目から何かが溢れそうになってしまった。
「ハハッ!姫さんらしくていいじゃねぇか!師範として、柱としてどうするべきかなんて決まってんだ、行ってこい!こいつらのことは俺たちがなんとかしといてやる!」
まだ息のある男に腰を下ろしたまま、その背をバシバシ叩き言葉通り杏寿郎を促すように反対の手をヒラヒラと振っている。
「いや、だがこの場を離れるのは……」
「柱3人が残ってんだ、万が一鬼が出たとしても対処ぐらい出来らァ!」
「……早くしないと待っているのではないのか?」
度々この場を離れる事に引け目を感じていた杏寿郎だが、全員に促されては行くしか道は残されていない。
「個人的には家で大人しくしていて欲しいが……仕方ない。行ってくる」
杏寿郎はそう言って鎹鴉に迎えに行くことを伝えるよう指示を出し、空へと送り出した。