第9章 風柱と那田蜘蛛山
玄関へ入ると、千寿郎と槇寿郎が3人の帰りを待っていたのだろう、すでにそこに姿を現していた。
「その子の部屋に布団を用意してある。そこに早く運んでやれ……胡蝶、よろしく頼む」
槇寿郎の言葉に2人は頷き、玄関を上がって廊下を進もうとするも、今にも泣きそうな顔で杏寿郎の顔を見上げる千寿郎が自身の視界をかすめた。
「千寿郎、俺が準備をする時に部屋においで」
出来る限り心配させないように穏やかな表情でそう言うと、千寿郎はハラリと涙を零し頷いた。
それを確認すると、再び早足で更紗の部屋へ向かい用意された布団に力なく弱い呼吸を繰り返す体を寝かせてやる。
「更紗、守ってやれずすまなかった……」
名残惜しそうに頬を撫でるが、このまま自分がここに居たとしても何をしてやることも出来ない。
それならば、せめて鬼の討伐をと決意し拳を握る。
「胡蝶、くれぐれも更紗を頼む」
「もちろんです、煉獄さんこそお気を付けて。今回の件は少々厄介かもしれませんので」
理由を聞こうとしたが、間違いなくこれから合流する天元や実弥が知っているはずなので頷くだけにとどめ、自身の部屋へと急いだ。