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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第9章 風柱と那田蜘蛛山


部屋にはまだ千寿郎は到着していなかった。
恐らく準備する杏寿郎の邪魔をしない為だろう……こんな時にも気を配ってくれる弟に1人苦笑を漏らしながら着々と準備を始める。

隊服へ着替えつつもあの時の光景が頭を過り、留まることなく杏寿郎の精神を苛んでいく。

(柱にも関わらず、好いた女子1人守れぬとは……なんと不甲斐ない事だ。鬼の気配も殺気立った人間の気配も感じられんかった……いや、それはおかしくないか?日も暮れかけ、俺は辺りには気を配っていたのだぞ。それに突然現れ、あぁも素早くあの場を去る事など普通の人間には不可能……鬼に関しては血鬼術がそういった類ならば可能だが)

いくら1人で考えを巡らせたところで答えなど出ない。
諦めて腰に日輪刀を差したところで襖の向こう側から千寿郎の声がした。

「兄上、今お時間よろしいでしょうか?」

「あぁ、構わない」

そう言いながら炎柱の象徴である羽織を肩にかけ、千寿郎を出迎える。
入口に立つ弟のその表情は先程よりは落ち着いているように見えるが、兄によく似た瞳はやはり不安げに揺れていた。

杏寿郎は跪いて千寿郎と視線を合わせ、肩に手を置く。

「お前に心配をかけさせてすまない……俺はこれから更紗を切り付けた輩と鬼を探しに行く。その間、あの子の側に居てやってくれるか?」
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