第3章 出会い
意外にもあっさりと千寿郎の誤解を杏寿郎が解いた。
それもこれも、事前に千寿郎には更紗の事を
『とある事情により深窓の姫君のような少女であるが故に世間に疎く、我々の常識が常識として通じない』
と説明していたからである。
あながち間違っていないが、褒めているようで全く褒めていない説明だ。
そして、ようやく杏寿郎は芋羊羹を口に入れる……と
「わっしょい!」
更紗は再びビックリだ。
「わっしょい……??いただきますとか、そんな感じの意味でしょうか??」
「む??わっしょいはサツマイモ関連の食べ物を食べた時に一般的に使われる掛け声だ!」
「そうだったのですね!初めて知り」
「更紗さん!一般的ではありませんよ!兄上にとっては一般的なだけです!」
危うく更紗が杏寿郎にまた自己流の常識を刷り込まれるところであった。
「え??でも、わっしょいと言った方が美味しさが伝わりますよ??」
「よく分かっているではないか!さぁ、更紗も一緒に食べて一緒にわっしょいだ!」
まさかのわっしょい合唱が始まった。
傍から見ると奇行だが、2人が楽しそうにするものだから、千寿郎も声を出して笑いながら美味しく芋羊羹を平らげた。