第3章 出会い
千寿郎は元より細やかな気配りの出来る少年であるが、元を正せば兄の突拍子もない数々の行動により練度を上げているのかもしれない。
「春とは言えまだ冷えます!早く温めなくては……」
「千寿郎がすぐに手拭いを持ってきてくれる!心配ない!」
と言われるが、何か温める方法はないかと必死に考え、更紗はピンッと思い付いた。
「こうすれば少しでも温かいですよ。お母さんが寒い冬によくしてくれました」
自然な流れで更紗は杏寿郎の手を取り、細く華奢な両手で温めだした。
ほんの少し力を使っているのか、更紗に握られている手がふんわりと銀色の粒子に包まれている。
「なっ!?ふぅ…… 更紗、俺だったからいいものの、男の手に簡単に触ってはいけない!襲われるぞ!」
首を少し傾げているところを見ると、全く分かっていないようだ。
「これも自分を守る術の1つだ!理解しなくても構わないから覚えておくといい!」
結構な迫力に更紗はコクコクと何度も頷く。
分かってもらえた事に満足したのか、杏寿郎はフッと笑ってもう片方の手を更紗の手に重ねた。
「だが、とても温かい。ありがとう」
「兄上!手拭いを……お!?し、失礼しました!!」
千寿郎は手拭いを落として両手で顔を隠してしまった。