第9章 風柱と那田蜘蛛山
更紗には指輪がどのような店で売られているかを知らないが、滑らかな銀色の輪に梅の花の装飾、赤いキラキラ輝く石を見ればそこらの商店で買ったものではないと分かる。
そんなところへ杏寿郎が糸を持って出陣して行ったと思うと、何だか可愛らしく思え笑顔が零れた。
「フフッ、そこまでしてご用意してくださったのですね。一生大切にさせていただきます」
「うむ!それは嬉しい限りだ!さぁ、日が暮れたら宇髄や不死川が血相を変えて探しに来るかもしれん。蕎麦屋に向かうか!」
更紗がニコニコと嬉しそうに指輪をなでながら頷き、2人は橙色の川を背に河川敷を登っていく。
道を歩いていても指輪を見つめる更紗を見て、杏寿郎はふと疑問に思った。
指輪に付いている石は更紗の瞳の色と合わせたのだが、これほど赫い瞳は珍しい。
(俺のように何か特殊な成り立ちなのか?)
自身の瞳が特殊な成り立ちからなる色なだけに、興味が沸いた。
他で見たことのない深い赫の瞳に。
「それにしても君の瞳と石の色は本当にそっくりだな!今更変な事を聞くが、その瞳は生まれつきなのか?俺の目も特殊な成り立ち故、気になっていたのだ」