第9章 風柱と那田蜘蛛山
杏寿郎がその箱を開けると小さな梅の花の中に赤い石が入った金属製の指輪が入っていた。
「これは……天元君が指にしているような感じの物ですか?」
更紗は元々郊外の村育ち、更には攫われた先では日々生きる為に必要な情報しか与えられずこの年齢まで過ごした。
助け出された後は男だけの煉獄家、そして鬼狩りを生業とする鬼殺隊で殺伐とした世界を生きるという特殊な人生。
身近に結婚指輪をしている女性がおらず、例えが小手のような布を止めるための金具を指に嵌めている天元しかいないのだ。
かと言って杏寿郎もそう言った事は詳しくなく、薄らと結婚指輪があると耳にしたことがあるだけなので情報量は更紗とさほど変わらない。
「意味合いは違ってくるがな!」
「意味合い……」
「あぁ。更紗、両家の許しが出たので改めて願う。俺と結婚してくれるか?」
確かに明確に結婚と言う言葉を口にしたことはなかったが、更紗はそのつもりでずっといたので食い気味に身を乗り出した。
「もちろんですよ!杏寿郎君以外考えられません!」
「そうか!ではこれを……」
箱から自分の指には到底入らない指輪を取り、左手の薬指に恐る恐る嵌める。