• テキストサイズ

月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第9章 風柱と那田蜘蛛山


更紗は頭の中で棗の亡骸を思い出す。
腐り落ちてしまった右腕、食い破られた腹、無理矢理引き抜かれた髪……

もし息を引き取る前に到着して治癒を行ったとしても、間に合わないような損傷だった。
死に目に会えたとしても、救えなかったならば後悔していただろう……力についてもっと研究を進めるべきだったと。

「ですが、救える命が目の前にあるならば救いたい。自分ではない誰かの為に傷付いた尊い人達の命を繋ぎたい。これは他の誰にも出来ない私が出来る唯一なのです。絶対に私自身の命をないがしろにしないと約束します」

普段の生活では表立って自分を前面に出すことはしないが、こういったことに関して貫こうとする意志が強い。

(全く……普段からその意志の強さが出ていれば断りやすいものを)

何を言っても揺るがない、そして自分がもし更紗と同じ力を持っていたとして、目の前で更紗や家族、仲間が瀕死であれば癒し救う道を間違いなく選ぶだろうと確信しているので無碍になんて出来るわけがない。

いまだに強い意志のこもった視線を向けてくる更紗の手を自身の方へ軽く引っ張り、胸の中におさめる。

「更紗の気持ちは分かった。だが後生だから約束だけは違わないでくれ。そして胡蝶の屋敷に行くときは必ず俺が付き添う、いいな?」
/ 1883ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp