第3章 出会い
暫くすると遠くの方で
バシャッバシャッ
と水が勢いよく地面に叩きつける音が2人の耳に届いた。
「千寿郎さん、杏寿郎さんは一体何をしに行かれたのですか?」
いきなり大の男が服を脱ぎ捨て、目にも止まらぬ速さで走り去った後、杏寿郎の手によるものと思われる激しい水音が響けば、誰であっても驚くというものだ。
「おそらく頭を冷やすために、井戸の水を頭から被っているのだと思います……でも、ご心配には及びません!すぐに戻ってこられますよ」
ご心配しているところはそこではないが、更紗は素直に納得して杏寿郎が出て行った縁側を見つめて呆然としている。
「ハハハハッ!うむ!スッキリしたぞ!!清々しい気分だ!」
千寿郎の言った通り、直ぐに戻ってきた。
頭の先からつま先までビッチャビチャで……
「あ、あの、杏寿郎さん、大丈夫ですか?」
「うむ!全く問題ないぞ!頭も体もスッキリしたからな!」
そのまま縁側から上がってこようとするものだから、千寿郎は慌ててその愚行を止める。
「兄上!!今手拭いをお持ちしますので、そこで待っていてください」
そう言って慌てて部屋を出て手拭いを取りに行ってしまった。