第9章 風柱と那田蜘蛛山
『え?』
思い思いの相手と思い思いの会話を弾ませていた柱全員の視線が一斉に槇寿郎に向けられた。
「はい!お義父様も一緒に作るのはお久しぶりですので嬉しいです」
「そうか!では年越しそばは3人でこしらえよう!」
『え?』
更紗の発言もそうだが、何より更紗への槇寿郎の発言と緩み切った表情に柱全員が一言の疑問しか口から出せなくなった。
「それならば俺も作るしかあるまい!よし!今日は家族全員で年越しそばをこさえよう!」
『…………』
煉獄一家と更紗を祝いに来たのにも関わらず、なぜか持て成される側になってしまった柱達はついに言葉を失った。
そこに思いもよらない柱の1人から声が発せられた。
「僕はどっちでもいいけど、買い出しにしろ調理にしろ主役がするのはおかしくない?」
なんと基本的に何事に関しても無関心を貫いていた無一郎だった。
だがそんな無一郎だからこそ、この何とも言い難い空気を打ち破れたのかもしれない。
「確かに……時透よ、それならば私がそばを買いに行き君がつくるといい。全て丸く収まる」
まさかの行冥降臨。
柱の中で最年長、腕相撲の強さも剣士としての強さも断トツ1位の彼が年越しそばを買いに行くという。
しかも任務帰りなのか隊服姿だ。