第9章 風柱と那田蜘蛛山
千寿郎の太陽のような笑顔に目をやられそうになりながらも、どうすればいいのか分からず中腰のまま止まっていると、杏寿郎が優しく肩に手を当ててきた。
「更紗、千寿郎に任せよう。あの子も俺達を祝いたいと思ってくれているのだ」
そう言われてしまえば更紗からすれば腰を落ち着けるしか道は残されておらず、千寿郎に笑顔を向ける。
「千寿郎君、ありがとうございます。ですが、後で一緒にお料理は作らせてください!年越しそばを杏寿郎君と仕入れてくる予定ですので」
千寿郎は戸惑い気味に杏寿郎に視線を向けるが、もちろんそこは更紗の気持ちも汲んでやる杏寿郎だ。
「こう言っているのだから、一緒に作るといい!それに、その方がゆっくり話せるだろう!」
煉獄家に毎日帰れない日が始まってから、杏寿郎はもちろん更紗も千寿郎や槇寿郎と話す機会がめっきり減ってしまった。
今でこそ千寿郎も父親と普段から話すことができるが、やはりいつもそばにいた人たちがいきなり離れることに寂しさを感じていたのだろう。
千寿郎は満面の笑顔で頷きその提案を快く受諾しようとすると、まさかの人物も名乗りを上げた。
「では俺も作るとしよう」
槇寿郎だった……