第9章 風柱と那田蜘蛛山
「更紗ちゃん、おめでとうございます。探されていたご両親ともお会いできてよかったですね」
更紗の対面にしのぶがニコニコと綺麗な笑顔で腰を下ろした。
「しのぶさん!ありがとうございます!……あの、後で少しお時間いただいてもよろしいでしょうか?力の事で相談事がございまして」
真剣な眼差しを受けしのぶは少し驚いたように目を見張ったが、そんな更紗を安心させるかのように優しい笑顔を浮かべて首を縦に振った。
「えぇ、もちろんです」
そうして卓袱台へ少し身を乗り出し、更紗へ手招きして同じようにするように促す。
更紗がしのぶの顔の近くへ自分の顔を寄せると、笑顔に似合わない真剣な声が更紗の鼓膜を刺激した。
「きちんと煉獄さんにも相談してくださいね」
ビクリと肩を震わせしのぶを見ると、相変わらずの笑顔だが言葉を覆すつもりはないと伺える雰囲気が出ていた。
「はい、後ほど相談しておきます」
「大丈夫です、更紗ちゃんの思いを理由もなく無碍にする方ではありませんから」
そんな2人のやり取りを杏寿郎は首をかしげて見ていたが、更紗のいつになく真剣な表情に思わず声を出せずにいる。