第9章 風柱と那田蜘蛛山
3人が居間へ足を踏み入れると、思い思いの行動をしていた千寿郎や柱達が一斉に視線をそちらに向けた。
「お待ちしておりました!お2人も父上もお座りください。皆さんがお料理や飲み物を持ち寄ってくださったので、準備はほぼ終わっているんです!」
千寿郎が笑顔で3人を卓袱台の前の席へと促す弟の頭を撫で、全員に向かって一礼する。
「個人的なことに集まってくれて嬉しく思う!宇髄の鎹鴉伝手に聞いていると思うが、今日無事に更紗の両親と顔を合わせることができ、婚姻関係を結ぶ許可をいただけた!」
杏寿郎は隣りにいる更紗の背に手を当て、殊更優しい笑みを向けてから全員に向き直る。
「祝言は状況が状況なのですぐにと言うわけにはいかないと思う。だが、その際には皆に参列願いたい」
一瞬の静寂の後、祝いの言葉が2人に向けて騒がしいくらいに投げかけられた。
「当ったり前ぇだろ!むしろ俺は媒酌人を派手に務めてやる!」
「煉獄さん、更紗ちゃん!おめでとう!祝言楽しみだわ!洋装、和装どっちも捨てがたいよね!伊黒さんはどちらがいいと思いますか?」
「え?俺は別にどちらでも……いや、俺もどちらも捨てがたくて選べない。とりあえずめでたい事だとは思う」
天元、蜜璃……に引っ張られた小芭内が2人と槇寿郎の前に駆け寄ってきた。