第9章 風柱と那田蜘蛛山
いつになく真剣な父親の眼差しを受け杏寿郎は一瞬息をすることすら忘れるが、曖昧な返事や無回答は許さないという無言の圧力に我に返り頷く。
「更紗のご両親にも約束してまいりました。天寿を全うするまで共に過ごします……と。炎柱として人々を鬼から守り、全ての悪から更紗を守ります」
「信じているぞ。そして君もだ、更紗」
杏寿郎から更紗へと強い眼差しを移す。
「君のご両親は君が築き上げてきた今を信じて、鬼殺隊に属する事、杏寿郎と共に人生を歩む事を許してくださったのだ。決して自分の命を軽んじてはならない。君の命は君を想う人にとってかけがえのないものだ、分かったな?」
あの屋敷から助け出された時、更紗が自分に危害が加わることを何とも思っていなかった事を杏寿郎から聞いていたのだろう。
確かにその時はそうだったが、今は大切な人はもちろん、鬼殺隊剣士として多くの人を守り助けたいと思っている。
棗の時のような悲しく辛い思いを他の誰かが経験しなくて済むように。
「はい、かしこまりました。これからお義父様ともたくさんお話ししたりして過ごしたいですし!絶対に皆さんの心を裏切ることはしません」