第9章 風柱と那田蜘蛛山
槇寿郎の部屋に近づくほど喧騒は遠のくが、普段の煉獄家では考えられない賑やかな声が響いている。
今となっては穏やかになった煉獄家の静寂も杏寿郎は心地よかったが、たまにであればこのような賑やかさも悪くはないと笑みをこぼす。
「杏寿郎君、賑やかで素敵ですね。でも、柱の方々の任務は大丈夫なのでしょうか?皆さんが一様にお休みの日もあるのですか?」
「決まった日に全員が休みと言う日は特にないが、一般剣士のみで対処可能な鬼しか出ぬ時は柱は出ない。偶然今日がその日だったと言う事だろう……あぁ、そう言えば今日は大晦日だったな……年をこの家で越すつもりだろうか?」
困ったような表情だが、声音は少し嬉しそうなので更紗も笑顔となる。
「それは楽しそうです!お義父様へのご報告を終えたら、おそばを買いに行かなくてはいけませんね。あ、私、日が暮れてからここにいても大丈夫でしょうか?」
「柱が全員揃っているならば問題ないだろう。ご報告後に共に買い出しに行こう」
久方ぶりに煉獄家で朝を迎えられること、煉獄家全員と柱全員と大晦日を過ごせる事に、更紗は喜び杏寿郎の手を握る。
「嬉しい……杏寿郎君とお買い物も楽しみです!お酒の席にはお義父様もお呼びしましょうね」
握られた手を握り返し、喜ぶ更紗に頷いたところで槇寿郎の部屋の前へ到着する。
2人は廊下に座り、いつも通りに声をかけた。