第9章 風柱と那田蜘蛛山
「今度はお顔合わせの時かしらね。宇髄さんも、その時にでも時間が合えばお顔見せてね」
涼平と紗那の温かい見送りに笑顔で「はい」と答え、出て行こうと杏寿郎が廊下へ足を一歩踏み出した時、思い出したように紗那が声をかけた。
「杏寿郎君、命を懸けてこの子を守るのではなく、生きてそばにいてあげてね。残す方も残される方も、同じくらい辛いから」
きっと更紗が攫われた時の事を思い出しての言葉だろう。
ただ守ってくれと言われるより重く、とても大切な事のように感じ、杏寿郎は慎重に頷いた。
「必ず。生きて守り、共に成長し、先の人生を天寿を全うするまで共に過ごします」
その言葉に安心したのか、紗那も涼平も笑顔を深めてから更紗を伴って立ち上がり、深く頭を下げて今度こそ2人を見送った。
それに応えるように杏寿郎も天元も頭を下げる。
こうして更紗の両親との初の顔合わせの時間は過ぎて行った。