第9章 風柱と那田蜘蛛山
「お父さん……それは聞かない方が……」
「え?更紗ちゃん、皆さんにご迷惑をかけているの?」
トンデモ母が更に追い詰めるものだからすっかり更紗は小さくなるが、杏寿郎と天元は顔を見合わせ、同時に更紗に柔らかな笑顔を向けてそれを否定した。
「ご安心ください。更紗はこちらが心配になるほど迷惑をかけてくれません。とても穏やかで優しい子なので、俺の家族を始め柱でも更紗を可愛がってくれる者が多いくらいです」
「頑張り屋で健気で、俺の女房達も派手に虜になってますよ。たまには我儘の1つでもいってほしいもんです」
あまりの2人の褒めっぷりに驚き両親は赤くなって縮こまる更紗を見つめるが、すぐに嬉しそうに顔を綻ばせて愛娘を抱きしめる。
その様子を見守った後、杏寿郎と天元は次々と両親に向かって頭を下げた。
「俺達はこれで失礼させていただきます。僅かではありますが、親子でお過ごしください」
杏寿郎が立ち上がるのを確認して、天元も頭を上げて立ち上がり2人で廊下につながる襖へと歩を進める。
「今日は本当にありがとう。君達がいてくれたから更紗とこうして会うことが出来た。また、会える日を楽しみにしているよ」