第9章 風柱と那田蜘蛛山
「お父さん……」
涼平は更紗とそっくりのフワリと優し気な笑みを浮かべながら瞳から涙を流す。
「更紗はお父さん達の前から幻だったかのように消えて、戻ってきたら素敵な彼を連れてきた。お父さんからしてもお母さんからしても、君はまだ5歳のまま止まっているんだ……子離れできないお父さんを許しておくれ……そこらへんはお母さんの方が子離れできているみたいで驚いたんだけどね」
いつの間にか涼平の手から解放されていた紗那は、更紗の頬を撫でながら目を細めて優しく微笑む。
「いつまでも更紗はお母さん達の子供に変わりないわ。でも、この子の力の事、これから起こるかもしれない困難、全てを含めた上で将来を共にしたいと言ってくださる殿方よ?更紗にとって煉獄さん以上に大切にしてくれる人は現れないと思ったの」
だが、優しい眼差しから一変して真剣な眼差しを更紗に向けた。
「あなたは周りの人が望むような力を持って生まれてきた。それは私利私欲を満たすために使うことは許されないわ。更紗が昔言ったように、沢山の人を救うために使いなさい。私には出来なかったけれど、今の環境、あなたならば出来る。鬼殺隊に関わる尊い人たちの為に使う事……いいですね?」