第9章 風柱と那田蜘蛛山
涼平のこの言葉は杏寿郎も言われるだろうと想定していた言葉だ。
自分でさえ更紗を鬼殺隊から身を引かせたいと何度も思ったほどだ。
婚約者となった今、継子でなくなってもそばに置くことが出来るようになってからはなおの事である。
父親からすればたった一人の愛娘、しかも11年ぶりに再会できたのだから当たり前の反応だ。
「お父さん!それは私が望んで」
「更紗は静かに、今は煉獄さんに話しているんだよ」
制する言葉は雰囲気と同じく穏やかで優しいが、有無を言わさない響きもこもっている。
それに更紗も思わず口つぐんだ。
「はい、それは私も日々葛藤している問題です。ですが、更紗さんの意志を私は尊重したく思います。それに彼女は今の状況ですと、自分自身で身を守るすべを身に着けるべきです。出来うる限り私がそばで守りますが、何事も完璧に成しえることはございません」
杏寿郎の言葉に、徐々に涼平の表情が和らいでいく。
その理由が分からないまま続ける。
「万全を期している今の状況からでも、更に安全性を上昇させるために更紗さんは私の継子として、1人でも危機を切り抜けられるようになるまで俺が育てます!必ず俺くらいの力をつけるまで導きます!」