第9章 風柱と那田蜘蛛山

杏寿郎は愛する女性を生み育てた尊敬する両親に向かって深々と頭を下げて言葉を続けた。

「更紗さんが鬼殺隊への入隊が決まったその日に想いを告げ、更紗さんからも私と同じ想いだと告げてもらえました。私がこの先の将来を共に歩みたいと思える女性は、生涯更紗さん以外考えられません。必ず幸せにします。更紗さんと家庭を持つことを許していただけませんでしょうか？」

すると思いのほか紗那が食い気味で2人に身を乗り出して、顔を赤らめながら答える。

「まぁまぁ！！更紗ちゃん、煉獄さんにすごく愛されているのね！もちろんそんなの……ムグッ！！」

続きは涼平が妻の口をふさぐことによって遮られてしまった。

「君は全く……すまない、少し待ってもらえますか？」

「は、はい。もちろんです」

涼平は紗那の口をしっかり押えたまま深呼吸を一つ落として、杏寿郎と更紗に向き直る。

「ここからは娘の父親として話させてもらう。君の気持ちは分かった。更紗を想う心、鬼殺隊での君の立ち位置、心身共に強靭なことも理解した。だが、親として自分の娘が鬼殺隊と言う血なまぐさい組織に身を置くことは仕方がないとはいえ受け入れがたい」