第9章 風柱と那田蜘蛛山
両親からすれば無期限で更紗とは共に同じ屋根の下で過ごせないという事を突き付けられたのだ。
その心痛は計り知れない。
過去も未来も壮絶なのにもかかわらず、そばで守ることすら叶わないのだから。
「どうしても……私達では更紗を守れませんか?私、この子がさらわれた時、家にいたんです!すぐ近くの家の中にいたのに……助けてあげられなかったんです。子供が怖い思いしてる間も、何も知らずずっと家で呑気に家事をしていたんです!私にもう一度、この子を守らせてほしいです……」
「お母さん……そんな風に思わないで……」
今まで静観していた母親、紗那は更紗と同じ色の瞳に涙を溜めて杏寿郎に懇願するも、それは杏寿郎が拒否する前に涼平によって止められた。
「紗那、それは叶わないんだ。僕達ではこの子を守るすべがない……連れて帰っても鬼に見つかれば更紗は……」
そう諭されてもすぐに納得できないのが母親というものだろう。
腹を痛めて命がけで生んだ娘を守れないことほど、辛いことはないだろう。
「分かってるんです……煉獄さんにお任せする事が一番だと。でも、守ってあげられなかった事があまりにも更紗に申し訳なくて情けなくて……」