第9章 風柱と那田蜘蛛山
改めて杏寿郎から聞かされた娘の壮絶な過去、これから待ち受けるであろうあまりに辛い未来に2人は項垂れる。
「鬼……という存在ははっきりとは認識していませんでしたが、私達が住んでいた村の近くでも明らかに獣に襲われたのではない夫婦の遺体が見つかりました……今でもそこの娘さんは行方不明で。それがあったので更紗の事は気がかりでしたが、村ごと移動したのです……うちの娘も、その鬼とやらに狙われているなんて……」
なんと村ごと移動した理由は棗の両親の死が原因だったのだ。
しかも行方不明と思い込んでいる棗は鬼殺隊に属しており……先の任務で命を落としている。
両親の憔悴具合も気がかりだが、思わぬところで棗の話題が出てきたので杏寿郎は更紗の方も気がかりになってしまった。
そっと更紗へ視線を移すと、眉は下がっているがかろうじて笑みを浮かべていたので、杏寿郎は更紗の頭をそっと撫でて両親に向き直った。
「現在は様々な処置を鬼殺隊内で施し、最悪の事態は回避しています。ですがそれは鬼を根絶やしにするまで続きます。正直申しますと期限はあってないようなもの……その期間あなた方の代わりに私に更紗さんを守らせていただけないでしょうか?命を懸けて守り抜きます」