第9章 風柱と那田蜘蛛山
両親は自分達の娘が11年見ぬ間に他人様に、それも年上の、多くの人から尊敬されるような青年に認められる存在になっていたことに喜びを感じ、娘に笑顔を向けていた。
そんな様子を微笑ましく眺めていたが、今日は何分時間が限られているので家族の時間を設けるためにも話を進めることにした。
「ご挨拶後にいきなり申し訳ございません。本部から軽くお聞きなられていると思いますが、鬼殺隊の事、更紗さんのこれまでとこれから……最後に個人的なお話がございますがよろしいでしょうか?」
杏寿郎の真剣な眼差しに涼平と紗那は顔を見合わせるが、自分達の大切な愛娘に関する事なので意を決して頷く。
「ありがとうございます。君も何か付け加える事があれば言ってくれて構わない」
「はい、ですが杏寿郎君の決められたことに私は従います」
両親の前で喜び辛い更紗の言葉に苦笑するが、両親に向き直り話し出した。
鬼殺隊と言う組織の存在、自分や更紗の立ち位置、任務の事。
杏寿郎が知りえるあの屋敷の事、当主の現状、鬼の動向。
それに伴う更紗の現在の状況。
婚約の事を除いて話すだけでも四半刻ほどかかったが、その間ずっと集中を途切れさせることなく両親は聞き入っていた。