第3章 出会い
「千寿郎、待たせたな!」
そう言って大きな卓袱台を挟んで千寿郎の前に杏寿郎が胡座をかくと、更紗はその隣りにちょこんと座った。
「お帰りなさいませ!あの、父上は更紗さんに失礼な言葉を言いませんでしたか?」
パッと顔が明るくなったかと思えば、オズオズと不安げな表情に変化する。
杏寿郎はもちろんだが、更紗も見ていて飽きないと感じていた。
「大丈夫だ!むしろいつもより話していらっしゃった!さぁ、茶にしよう。菓子はあるか?」
「それはよかったです!更紗さんを追い返してしまったらどうしようと思っていたのです。菓子は芋羊羹を準備していますので、すぐに持ってきますね!」
そうして千寿郎の姿が見えなくなると、杏寿郎は更紗の方へ顔を向ける。
「楽しみにしていたのが伝わるだろう?父上があの状態ゆえ、俺が任務の時はこの広い家の中、ほぼ1人で過ごしている。無理のない程度で構わない、たまに相手をしてやってもらえないか?」
弟を大切にしている事がヒシヒシと伝わる表情だ。
「私なんかでお役に立てるならば、喜んでそうさせていただきます!」
「そうか!それは大変助かる!それに千寿郎は感情表現が見た通り豊かだ、君のいいお手本になるはずだ!」