第9章 風柱と那田蜘蛛山
隠からすればそう言いたくなるのは当たり前だろう。
ただでさえ炎柱の継子の両親の案内で気を張っているのに、そこへ音柱本人が付き添うなんて言って現れれば追い返したくもなる。
「更紗のご両親を探し当ててくれたのは宇髄だからこの件は君に伝えていたが、まさかここまで来るとは思ってもみなかった!」
誰も思ってもみなかった事をやってのける、それが天元だ。
だが更紗は嬉しそうに顔を綻ばせている。
「天元君、心配してくださってありがとうございます。せっかくなので同席されますか?」
「いや、さすがに同席はしねぇな!お前ら婚姻の許可も取るんだろ?例え俺が媒酌人を祝言の席で務める男とは言え、そこまで空気読めない奴じゃないからな」
いつの間にか祝言の場での役割を天元は自分で決めていたが、更紗と杏寿郎は顔を見合わせたもののそれを辞退願うことはしなかった。
「まだご両親の許可も得ていないので、祝言の日取りも何もないが……その時がくれば媒酌人は宇髄に務めてもらおう!」
「はい!媒酌人は何をしてくださるのか分かりませんが、ぜひお願いします!」
「あ、俺も知らねぇから教えてくれ、煉獄」
……杏寿郎が2人を前に笑顔で固まったことは言うまでもない。