第9章 風柱と那田蜘蛛山
相変わらず朝餉を2人して山ほど平らげた後、しばらく互いの見慣れぬ姿を堪能していた時、騒がしい声が障子を開けて入ってきた。
「よう、煉獄、姫さん!派手に久しぶりだな!」
いつもどこからともなく、機会を見計らったかのように現れる音柱 宇髄天元が隊服姿で朝とは思えぬほどの勢いでやって来た。
「「え?」」
もちろん今日ここに天元が来る予定はなかったので、2人は目を点にして迎えることとなった。
「相変わらずお前ら似合いだな!ちょっと邪魔させてもらうぜ」
2人の許可なんてなんその、ズカズカと部屋に入ってきてドンと腰を落ち着かせた。
更紗より先に我に返った杏寿郎は、盆の上に置かれた急須から湯呑へ自ら茶を注ぎ入れる天元に当たり前の質問をする。
「宇髄、なぜ君がここにいるのだろうか?お館様の予定にも俺の予定にも君は入っていなかったのだが」
杏寿郎の予定に入っていなかった事はもちろん更紗の予定にも入っていない。
当然天元の中でしか予定に入っていないわけだ。
「隠の奴らだけだと不安だろ?道を間違えたり変な輩にからまれたりしたら、妹同然の姫さんの親が派手に困ると思ったんだが、余計に目立つから先に行けって隠に言われた」