第9章 風柱と那田蜘蛛山
頭の中でこんなにも後悔しているにもかかわらず、熱は一向に冷めてくれない。
そんな自分の体を恨めしく思いながら、諦めたようにため息を小さく漏らす。
「あの、お辛ければ何かお手伝いをさせて頂きたいと思ったのですが」
(あぁ……もう限界だ)
恥ずかしさをおしてまで熱をおさめようとする言葉に、杏寿郎の必死に繋ぎ合わせていた理性のタガが外れてしまった。
更紗に返事をすることもなく、杏寿郎は華奢な体を搔き抱き、赤く染まった頬を手で固定して薄く開かれていた唇に舌を滑り込ませて絡ませる。
少し苦しそうなくぐもった声が杏寿郎の鼓膜を刺激し、ようやく解放してやると、更紗は静かに深呼吸をして今度は杏寿郎へとその唇を落とし、自分がしたように口内に舌を侵入させてくる。
それに驚き唇を離すと、寂し気に瞳が揺れた。
「更紗……約束は守るが、後悔したとしても知らんぞ」
「はい、後悔なんてありえません」
相も変わらず薄紅色の頬でほほ笑む更紗に、杏寿郎の脳は完全に熱に浮かされた。