第9章 風柱と那田蜘蛛山
そう言われてしまうと一気に恥ずかしさが増し、尚更手から顔を出せなくなってしまう。
(私は朝からなんて事を……迂闊でした)
頭の中で考えていることが杏寿郎には手に取るように分かってしまい笑いがこみ上げてくる。
「そのような反応をされると期待してしまうのだが、更紗がどうにかしてくれるのか?」
ちょっとした意地悪で言ったつもりだったが、言った後に後悔した。
数日前に更紗が自らおさまらせようとそれに触れかけたのだ。
「は、はい!!」
(やってしまったな……よもやよもやだ)
杏寿郎が心の中でどうしようかと考えあぐねている間も、更紗は顔を赤く染めつつもしっかりと杏寿郎を見つめてどうすればいいのか問う視線を向けている。
「本当に大丈夫なのか?心的外傷を植え付けるわけにはいかないと思っているのだが」
「し、心的外傷など、杏寿郎君に関して負うことはありません!」
(ご両親への挨拶前に許されるのか?!我ながら失言してしまうとは……不甲斐なし!)