第9章 風柱と那田蜘蛛山
(私があの屋敷でただ生きている間にも、沢山の命を繋いできたのでしょうね。すごいなぁ……杏寿郎君はもちろんですが、鬼殺隊の方全てが尊い存在です)
そう思うとますます目の前の杏寿郎へ愛しさが増し、思わず胸元の古傷に唇を落としてしまった……
一気に体温の上がった更紗を抱きとめ続けている杏寿郎が、目を覚ましているとは気付かぬまま……
「朝からえらく積極的だな」
「ぴぎっ?!」
まさかこんな結果になるとは露程にも思っていなかった更紗は不可解な声と共に体をビクッと震わせた。
「ぴぎ?フフッ、今日も今日とて愛らしいな。して、今日の昼間には君のご両親にご挨拶だというのに、俺を誘うとはなかなか……やってくれるではないか」
「違うのです……傷跡の分だけ人を助けられたのだと思うとつい……決してやましい気持ちからではなくて」
己の失態から招いた結果と言えど、思い出すだけで羞恥心にかられる行動の一部始終を見られていたと思うと、両手で顔も隠したくなるだろう。
そして杏寿郎もおそらくそんな事だろうと分かってはいたが、寝起き早々胸元に唇を落とされては男として反応してしまう。
「そうだとしても朝から刺激的過ぎてな。色々おさまらないものを鎮めるのは骨が折れそうだ」