第9章 風柱と那田蜘蛛山
ひとしきり甘やかしてもらった後、任務の疲れを癒すため実弥に見送られて更紗と杏寿郎は自分たちにあてがわれている部屋へと戻り、今は布団を隣りに並べ潜り込んでいた。
更紗に至っては涙を流しすぎて、このままだと明日は目が腫れるのは確実だと杏寿郎に言われ濡らした手ぬぐいを目の上に乗せている。
「辛いところはないか?足の甲に貫通するほどの攻撃を受けたと聞いたが……他に怪我はしなかったのか?」
杏寿郎はどこまでも更紗が心配なようで、それが全て解決しなければおちおち眠ることも出来ないらしい。
そんな杏寿郎に煩わしさを一切感じず、丁寧に答えるのが更紗だ。
更紗は目の上の手拭いを取り、杏寿郎に向き合うためにコロンと体を横に転がした。
「腕の骨も折れましたが、その時は興奮状態で痛みを感じませんでした。それも治癒しましたので今は完治しています。ご心配ありがとうございます。杏寿郎君も……痛むところはないですか?」
その言葉に杏寿郎は安心したように笑みを浮かべた後、布団から出されている更紗の手を握る。
「今痛まないならよかった。俺は特に怪我はないが、最近はそばに更紗が常にいたのでな、少し違和感を感じた」