第9章 風柱と那田蜘蛛山
「桐島少女の一件で、あの子の内にあった力が引き出せれたのかもしれんな。その他に変わったことはなかったか?聞いたことはないが、日輪刀の色が変わったとか」
昨夜の鬼との戦闘を目をつぶって反芻させ、ふと思い当たることを口にした。
「そう言えば通常通りの炎の中に紫の炎がちらついてた。だが日輪刀は変わってなかったぞ……派生かァ?」
「見て見ぬことには分からんが、その可能性は高い。おそらく炎に準ずる派生だろう、日輪刀も赫が発現していたしな……して、鬼は更紗が滅したのか?」
棗の事もあり、昨日の任務の情報を出来うる限り知りたいのだろう。
杏寿郎は質問ばかりで申し訳ないと思いつつも、実弥に問いかけるが、実弥は特に煩わしそうにしていないので心の中でホッと息をつく。
「1人で元下弦ノ伍の鬼の頸を斬った。血鬼術で足の甲を貫通させられたがな……そん時、咄嗟に怪我ァ治して1人の剣士に見られたが、対処はしてる、俺がそうなるかもしれねェって分かってて1人で闘わせたんだ、責めんなら俺を責めろ」
元とは言え下弦の鬼を倒した事が師範として嬉しいのか、穏やかな笑みを杏寿郎は浮かべた。
「責める事などない。君が対処してくれたのなら何も問題は起こらないだろう。そうか……元下弦ノ伍を倒したのか。任務のさ中に仇を打たせてやってくれて不死川には感謝しかない」