第9章 風柱と那田蜘蛛山
「いや、君が看取ってくれていなかったら更紗はもっと気に病んでいただろう。1人きりで逝かせてしまったとな……あぁ、あの泣き顔は堪えるだろう?耐え忍ぶような泣き方をするからなのかもしれんな」
目の前にいないにもかかわらず、2人は更紗の泣き顔を脳裏に思い浮かべてそれぞれ胸を痛め、顔を見合わせてため息をこぼす。
「まぁ少しでも楽にしてやれてたなら謙遜はしねェ。あと煉獄。あいつ何かよく分かんねェ技出してたぞ。確か炎の呼吸 未定ノ型 紫炎の猫 とか……あれ何だ?」
更紗を想い沈痛な面持ちだった杏寿郎だが、実弥の思いもよらぬ発言に目を見開き驚いた。
「み、未定ノ型?そんなものは炎の呼吸に存在しない。心当たりがあるとするならば、伍ノ型 炎虎を放つと猫が出てきたりしていたが……どのような技だったか教えてもらえるか?」
「お前さえ知らねぇのか……まぁ技自体は読んで字の如く、紫の猫が飛び出してた。強力な一撃と言うより、その場で足を踏ん張って横に刀を薙ぐ技っぽかったなァ。遠目で見ただけだが、勢いが止まった刀に勢いを持たせる補助的なもんにみえた」
杏寿郎は疑問符を頭に浮かべ悩みだすも、元々更紗の技は炎の呼吸と似て非なるものだと感じたこともあったので、いつも通りのバチっとした表情になる。