第9章 風柱と那田蜘蛛山
実弥の気づかわし気な声音に涙が流れそうになるが、それを空を仰いで防ぐ。
そんな更紗へと、子供を胸に抱いたまま剣士が歩み寄った。
「月神……その……感謝してる。俺ではあの鬼に殺されてたと思う。さっきは嫌なこと言って悪かったな……継子だから気に入られて柱に付き添われてるんじゃなくて、さっきの力が関係してんだろうなって何となく分かった。不死川様に言われた通り見なかった事にするから、絶対他言はしない」
更紗が重傷を負いながらも圧倒的な力で鬼を追い詰め、やがて屠る姿を一部始終静観し、剣士が出した答えだ。
先ほどまでの刺々しさはなりを潜め、今は更紗に向かって頭を下げている。
その様子に更紗は涙が引っ込むくらい驚きながらも、嬉しそうに顔を綻ばせる。
「いえ、やはり事情を知らされてなければ先ほどのように思われるのが当たり前だと思います。よろしければお名前を教えていただけませんか?」
「石清水 圭太」
「圭太さん、またご一緒する時はよろしくお願いします」
フワリと笑う更紗に圭太は顔を赤くして俯くも、実弥によって釘を刺された。
「更紗に手ェ出したら煉獄が黙ってねェぞ。そこらへん考えてこれからの付き合い方を考えろよォ」
最後に盛大に圭太が脅され、任務は終わりを迎えた。
後は杏寿郎と夕刻前までいた藤の花の家紋の家に向かうだけだ。