第9章 風柱と那田蜘蛛山
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象!!」
折れて痛む腕を気にも留めず、滑らかに空中で曲線を描きながら、やはり紫の炎をちらつかせつつ再び鬼の頸へと勢いよく日輪刀を振り下ろし、頸の半分の位置まで刃をめり込ませる。
そのまま足を鬼の両肩に乗せ、あらん限りの力で日輪刀を横へ薙ごうとするが、鬼の抵抗とその硬さからなかなか進まずにいる。
(硬い!!このままじゃ……!!)
更紗は何か思いついたのか、肩の骨を砕かん勢いで両足を踏ん張り発する。
「炎の呼吸 未定ノ型 紫炎の猫!」
(は??未定ノ型ァ?!)
実弥は初めて見る更紗のトンデモ少女ぶりに目を見張るも、それ以上に名前からは想像しかねる技の威力に息を吞んだ。
読んで字の如く、更紗の日輪刀から紫色の小さな猫が獲物を狩るように勢いよく飛び出し、今まで動かなかった刃を一気に進ませ、見事頸を斬り離し頭を宙に舞わせた。
だがそれと同時に更紗の体も均衡を保てず地面に落下していき、すんでのところで実弥が抱き留め事なきを得る。
「実弥……さん。お手間を取らせてしまい……申し訳ございません。でも……倒せました」
腕をひどく腫れさせ、反対の腕でまるで顔を見られないように目元を覆う更紗に、実弥は辛そうに目を細めて頭を撫でてやる。