第9章 風柱と那田蜘蛛山
急な攻撃を技で防ぐも、全てを防ぎきることは叶わず足の甲を一粒の氷の粒が勢いよく貫く。
しかし更紗は顔色一つ変えずその場にしゃがみ込み、手を当てて全力で力を発動させ一瞬で傷口を塞いだ。
「なんだその力は?!人間の域を超えてるではないか!あのお方に差し出せば俺は十二鬼月に戻れるぞ!」
「十二鬼月の落ちぶれ者が大きな口を叩かないで。私は現炎柱 煉獄杏寿郎の継子、あんたに捕まるほど柔な人間じゃない。お願いだから私の前からさっさと消えて……炎の呼吸 壱ノ型 不知火」
いつもの如く圧縮されたような橙の炎の中に、僅かな紫の炎をちらつかせながら鬼目掛けて凄まじい勢いで迫り寄り、ついにその頸に刃を突き立てる。
「グッ……!!舐めるな、小娘がぁ!!」
だが鬼もそうやすやすとは頸を斬らせてくれるはずもなく、渾身の力で更紗の腕に拳を振り下ろした。
ボキッ
鈍い音が細い腕から鳴り響く。
その音は実弥の耳にも届き、間に入ろうと声を張った。
「もう離れろォ!!死んじまったら元も子もねぇぞ!」
しかしその声も今の更紗には届かず、更紗は一度頸から刃を抜き取りその場で跳躍し、空中で技の発動にかかった。