第9章 風柱と那田蜘蛛山

「やれます。ですので……お願いします、あの鬼を倒したいのです」

実弥は棗の体をそっと地面へと横たわらせてやり、すでに立ち上がっている更紗と視線を合わせるべく立ち上がって屈んで頭に優しく手を置く。

「わかった。だが危険だと思ったらすぐに手ェ出すぞ？もう目の前で誰も死なせねェ」

柱からの許可を得て、更紗はフワッと笑うと鬼へと向き直った。

そして実弥は剣士に指示を出し、命令を下す。

「お前はそこにいる子供を保護しろ……んで今から見る更紗の事は他言無用、俺への質問も受け付けねェ。分かったかァ？」

ギロリと鋭い視線を向けられ、なんのことに対してか理解出来ないが素直に頷いておく。
きっと、それを質問しても答えてもらえないと直感で分かってしまったからだ。
そして気を失っている子供を剣士の腕から保護し、自分の胸に優しく抱きとめ、これから何かが起こる更紗へと視線を移した。

(泣いたあとがある……不死川様の前にいる剣士、やっぱり知り合いだったのか……目の前で亡くすのはキツいよな……)

悲しみながらも仇を取ろうと懸命に前を向く少女に、心の中でそっと応援しながら。