第9章 風柱と那田蜘蛛山
実弥の声に反応し、すでに虫の息の少女は瞼を震わせて緑がかった瞳を覗かせる。
その表情は安心したように緩められ、僅かに笑みをたたえる。
「風柱……不死川……様、お手間を取らせ……申し訳ございませ……」
「もう喋んなァ……お前は立派に守りきった。あそこの死んでる剣士が抱きかかえてる子供……ちゃんと生きてる」
実弥が言う子供、その子は片手片足をなくし事切れた剣士に抱かれ木の影に隠されるように守られていた。
今は気を失っているようだが、息をしているのが確認出来る。
「よかっ……た。あの子の目の色…… 更紗ちゃんに……そっくりで……守らなきゃって……」
更紗と言う名前を聞き、実弥は目を見開き息を呑む。
「更紗……って、月神更紗かァ?」
ほんの少し少女は目を驚いたように開くが、すぐに花のような笑顔をその顔に咲かせた。
「やはり……ご存知でしたか。フフッ、さすが炎柱様の……許嫁。あの子に……伝えて下さい……約束、守れなくて……ごめんね、昔も今も……大好きだよ……って」
「クソっ!!ここに来てる!すぐにここに到着する……だから生きろ、自分で言え!」