第9章 風柱と那田蜘蛛山
残念ながら立てられた白羽の矢は抜く事は叶わないので、ビクビク怯えながらも剣士は特徴を伝え始める。
「ご、ご報告させていた……」
「声が小せぇんだよォ!報告する気あんのかァ?!」
こればかりは本当に小さくて聞こえなかったので仕方がないが、心の中で更紗は剣士を全力で応援した。
涙目になっている剣士が少し哀れに思えたようだ。
「はいぃ!ご報告させていただきます!背丈は6尺程、肌の色は灰色、身体的特徴は人と変わらず、これといって特筆するものはございません!瞳に下弦 伍と刻まれていましたが、その瞳は交差するように傷を付けられていましたので、恐らく現在は十二鬼月ではないと思われます!」
剣士は1度言葉を切り実弥の様子を伺うと、どうやら不満はないようで無表情だが特に怒っている気配はない。
少しばかりホッと息をついて次に血鬼術について説明を始める。
「血鬼術は吹雪を起こしたり、雹を操ったりします。吹雪で視界を奪われ、そのままだとあっという間に体中が氷で覆われ、凍傷らしいものになり……体が徐々に壊死します。それから逃れたと思えば無数の雹がまるで銃弾のごとき速さで襲ってきて……体に穴を……あけられます」