第9章 風柱と那田蜘蛛山
実弥が更紗の階級を見て驚いてからしばらくして、2人は今回の任務地である平地に辿り着いた。
そこにはすでに他に招集された剣士や先立って任務にあたっていた剣士も集まっており、風柱の到着を待っていたようだ。
そしてその柱と共に現れた少女剣士に自然と全員の興味がそちらに向くが、風柱はそれを一々説明する気はないようで現状の把握を優先させる。
「今どんな状況だァ?鬼に一太刀でも浴びせたのかよ?」
現状把握する為の質問とは言え容赦ない詰問に、先立って任務にあたっていた剣士達はもちろん、なぜかつい先程ここに到着したであろう剣士達も実弥から視線を逸らした。
「……もういい、よォく分かった。お前らが束になって掛かっても一太刀すら浴びせられてねぇってなァ」
笑ってはいるが、そこから溢れ出る雰囲気は間違いなく怒気をふんだんに含んでいる。
更紗はいつも向けられる笑顔とは全く違う事に驚くも、今は口を挟める空気ではないので黙って様子を伺うことにした。
「はぁ……どんな身形か、どんな血鬼術を使うかくらいは分かってんだろォ?せめてそれだけでも教えろや……そこのお前、話せ」
運悪く1番前に立っていた剣士は実弥に指をさされ、助けを求めるように更紗に視線を向けるもそれを実弥が許すはずもなく、視線だけで話すよう促している。