第9章 風柱と那田蜘蛛山
柱に期待されたとなれば、その期待に応えなければならないし、応えたいと更紗は気合を入れる。
「はい!この1ヶ月、杏寿郎君とほぼ毎日任務に出ておりましたので、その成果を存分に発揮出来るように頑張ります」
ほぼ毎日……と言う言葉に実弥は引き気味で更紗を見る。
同行任務とは言え、柱として継子を甘やかす性格ではない杏寿郎とほぼ毎日任務をこなし、今ここに元気でいるのは普通ではない。
更紗の任務に杏寿郎が同行するならばまだ分かるが、その反対ならば怪我をして蝶屋敷で何度か世話になっていてもおかしくないのだ。
「お前らの生活どうなってんだァ?怪我しねぇのかよ」
「軽い怪我はありますが、重傷を負う前に杏寿郎君が手を貸して下さいますので……まだまだ助けていただいてばかりですよ」
笑いながらそう言うが、それでもほぼ毎日任務をこなしているのだから、鬼殺隊に入って数ヶ月にしては十分過ぎる。
「煉獄の体力に付いてってるだけで脅威だわ。んで、階級は上がったのかァ?」
更紗は嬉しそうに頷き、手の甲を実弥に向けて言葉を発する。
「階級を示せ」
グッと力を入れて浮き出てきた文字
『己』
思わずその手を実弥は掴んで凝視していた。