第9章 風柱と那田蜘蛛山
「外套、というものですね!わぁ!!すごく素敵です!」
嬉しそうに抱き留める外套は、鬼殺隊らしく黒で統一されているが、銀色の釦や頭巾などもついていて女子仕様となっていた。
正しく隠の裁縫係が更紗の為に作ったと思われる。
「更紗によく似合いそうだ!これから寒くなるからちょうど良い。よかったな」
無意識に更紗の頬に手を当てて口づけをしようと顔を近付けるも、目の前の実弥から送られる呆れた視線にすんでの所で思いとどまれた。
「そうしたくなる気持ちは分からくねぇけどよォ……2人の時にしろやァ。なんか妹に手ェ出されてるみてぇで複雑な心境になるだろ」
実弥の中では同じ稀血で、初対面でも傷跡だらけの自分を目の前にしても恐怖を瞳におくびにも出さなかった更紗は、貴重で可愛い妹のような存在だ。
苦言の一つでも言いたくなるだろう。
「すまない!ついいつもの癖でな!む?そう言えば先ほど更紗は出発の準備をしようとしていたが、そろそろ時間なのではないか?」
こんな事をしている間にも刻々と時間は過ぎており、杏寿郎いう通りそろそろ出発しなければ予定の時刻を過ぎてしまう。