第3章 出会い
2人の目の前に到着すると、礼儀正しくお辞儀をして煉獄よりも穏やかな目元を綻ばせた。
「お帰りなさいませ、兄上。そして初めまして、更紗さん。杏寿郎兄上の弟の千寿郎と申します。僕も兄上に稽古をつけていただいていますので、一緒に頑張りましょう!」
初対面にも関わらず嬉しそうに更紗に挨拶をする。
その様子にいつもより更に優しい笑顔で杏寿郎はクシャッと千寿郎の頭を撫でた。
「初めまして、千寿郎さん。私は月神更紗と申します。私の方が妹弟子になりますので、ご教授お願い致します!」
こちらは慌ててペコリとお辞儀をして挨拶をする。
2人の間でホワホワした温かい空気が流れ、杏寿郎は嬉しいのかウンウンと頷いている。
「ここで立ち話も良くない。まず俺と更紗は父上に挨拶をしてくるから、千寿郎は居間で待っていてくれるか?」
「はい!お茶を用意してお待ちしています!」
千寿郎はクルリと踵を返して、早足で廊下を歩いていった。
それを見送ると、杏寿郎は土間へ上がり、廊下へ腰掛けると草履を脱ぎ始める。
「更紗も草履を脱ぎなさい。そのままだとずっと家の中に入れないぞ」
そうして更紗も杏寿郎に促されて草履を脱ぎ、この家の当主の部屋へと向かっていく。