第3章 出会い
あれから本当に3度休憩を挟んで移動を終えていた。
鬼殺隊本部でのしのぶの叱責が思いのほか杏寿郎に響いていたのかもしれない。
3度の休息以外にも、更紗に何度か声を掛け大丈夫か確認していた。
そして今は必要な着物や肌着、食料をいくつか買って杏寿郎の生家の引き戸の前に立っている。
「緊張しなくて大丈夫だ。父上は母上を失ってから元気を無くしてしまったが、酷い事は絶対にしない。弟の千寿郎は俺と比べて細やかな気遣いができる、心優しい少年だ。歳も俺より更紗の方が千寿郎に近いから、きっとすぐに仲良くなれる!」
初めて会う杏寿郎の家族に内心ビクビクしていたが、杏寿郎の言葉に励まされグッと胸の前で手を握りしめ、大きく深呼吸をした。
「はい、大丈夫です」
「うむ!では入るぞ!」
杏寿郎は引き戸をガラガラと勢いよく開け、お馴染みの大きな声で家の中に向かって帰ってきたと伝えた。
「ただいま戻りました!」
それを待っていたと言うように、奥からたすき掛けをした少年がパタパタと姿を現した。
(わぁ!杏寿郎さんにそっくりです!)
玄関に小走りにやってきたのは、身長や体格を杏寿郎より小さくした杏寿郎と兄弟だと誰が見てもわかる少年だった。