第9章 風柱と那田蜘蛛山
唐突に任務の話に切り替えられるも、更紗もその事が胸の内で気になっていたのか真剣な表情に瞬時に変化した。
「そうです。あと少しすれば出発して不死川様と現地近くで落ち合ってから向かいます。杏寿郎君の継子として恥ずかしくない働きをしてまいりますね」
今日は更紗にとって初めて杏寿郎以外の柱への同行任務で、杏寿郎は単独任務である。
つまり今回の実弥が赴く任務は人手が必要であり、杏寿郎の任務は柱一人で事足りると判断されたのだ。
そのような任務は杏寿郎も更紗とは赴いたことがないので、いささか心配そうに眉をひそめた。
「気負うことはない。ただ、そちらの任務は一般の方々を含め鬼殺隊剣士にも多くの被害と行方不明者が出ていると聞く。不死川がいるとはいえ、更紗も気を抜かないようにな」
杏寿郎の言葉に慎重に頷き、膝で固く握られている手を取り両手で包み込む。
「ご心配ありがとうございます。気を引き締めて任務を全うしてまいりますので……杏寿郎君もくれぐれもお気を付けください」
互いが互いを心配するのは当たり前の事だ。
数刻前まで話していた仲間が目の前で亡くなることも少なくない。
鬼殺隊に身を置く者たちは常に誰かの為に命を張り、命を繋ぎ、消えていく。