第9章 風柱と那田蜘蛛山
今日世話になるのは藤の花の家紋の家だ。
あてがってもらった部屋で、相変わらずのトンデモ少女を前に座らせ杏寿郎は言い聞かせる。
「俺も言う時を間違えたが、外はいけない。傍から見れば俺がああ言った行為を更紗に強要していると見られかねん……」
人が周りにいなかったから良かったものの、2人を知る人でも知らない人でも、目撃すればまず痛い目で見るのは杏寿郎になってしまうのだから真っ当な意見だ。
「すみません……なんだかお辛そうだったのでつい……これからは気を付けます」
さすがに更紗も今思い返すと必死だったとは言え、行き過ぎた行為だと反省しているようで項垂れている。
至極当たり前のことを言い聞かせているにも関わらずしょげかえる更紗を見ていると、惚れた弱みか杏寿郎がなぜか罪悪感に駆られてしまう。
「分かってくれればいい」
いつもなら更紗を呼ぶが、今回は杏寿郎が立ち上がり更紗のそばへ歩み寄って、体を縮こませて反省している更紗の前に座りそっと頬に触れ顔を上げさせる。
「その気持ちは有難く受け取る。そんなに落ち込まないでくれ」