第9章 風柱と那田蜘蛛山
「ありがとうございます!でも、本当によろしいのですか?杏寿郎君やお館様に更なるご迷惑が……」
「俺は更紗の事を1度も迷惑だなんて思ったことはない。お館様もそれは同じはずだ」
眉を八の字にしている更紗の頭を撫で言葉を続ける。
「それで条件なのだが、先程も言ったが特定の藤の花の家紋の家、狂い咲きしている藤の花が植えてある家である事、昼間である事、一刻ほどの時間である事、更紗が1人でご両親と会う時間も作るが、先に俺が同伴してこれまでとこれからの状況を話す事だ。条件が多く申し訳ないが、これがこちら側の譲歩できる最低の案だ。構わないか?」
更紗は条件があろうとも、そんなの関係ないと言うように嬉しそうに顔を綻ばせて何度も大きく頷いた。
「会わせていただけるなら、そのような条件あってないようなものです!すごく嬉しい……杏寿郎君、本当にありがとうございます!」
嬉しさのあまりか、更紗は杏寿郎に飛びつきその胸にスリスリと猫のように頬ずりをしている。
その表情だけでも心から喜んでいると伝わり、杏寿郎も心からこのような結果になり良かったと安堵した。