第9章 風柱と那田蜘蛛山
驚き目を見張る杏寿郎をよそに、更紗は唇を離しそこに顔を埋める。
その顔の体温が直に杏寿郎の体の熱を意思とは関係なく上げさせていった。
「更紗、そのような事をしては……本当に止められなくなる」
「いい……です。止めなくていいです」
杏寿郎は更紗が本気で言っているのか分からず、自身の胸にしがみついている体をそっと離し柘榴石のような綺麗な瞳を見つめる。
「本気で言っているのか?」
杏寿郎の目に映る更紗には、恐怖や渋々と言った感情は見て取れず、言葉が返ってこずとも本気だと伝わった。
「君はどう言うことをするのか……知らんだろう?」
更紗は申し訳ないと言わんばかりに眉を下げ杏寿郎にこい願う。
「お恥ずかしながら全く……ですので……杏寿郎君に教えて、もらって……捧げたいと……」
その言葉だけで一気に弾け飛びそうな理性を必死に手繰り寄せ、立ち上がって押し入れから布団を運び畳に広げると、更紗を横抱きにしてその上へ静かに横たわらせ、自身もその横に身を寄せる。
「嫁入り前で君のご両親にも挨拶すら出来ていないが、更紗は後悔しないか?」