第9章 風柱と那田蜘蛛山
それを感覚で感じ取り、更紗は化粧に興味があるかないかなどを答える余裕はない。
「は、はだけてしまうと体が……まだお外も明るいですし、は、は、走って帰ってまいりましたので汗が……」
何を言っても杏寿郎の帯を滑る手は止まらず、こうしてる間にもどんどんと結び目に迫っている。
「そうだな、外が明るいから君の体がよく見えて丁度いい。汗も今はきっとかぐわしい香りだろう」
恥ずかしさのあまり目をつぶっている更紗の唇に啄むように口づけを何度もし、その後口づけをしている間、更紗が息を止めている事を知っている杏寿郎は長く唇を落とす。
「……んっ」
空気を体内に取り込むために更紗が我慢できずに口を僅かに開いた瞬間、自身の舌を滑り込ませて中にある舌に絡ませる。
わざと音が出るようにしてやると、恥ずかしさからか更紗が身をよじらせるも、後頭部を押さえられているので離れることは叶わない。
杏寿郎が離れる間際に軽く舌を吸うと更紗の体が跳ね、小さな嬌声が漏れると、杏寿郎は嬉しそうに目を細め後頭部の手に入れていた力を緩めた。
ようやく唇からも杏寿郎の手からも解放された更紗は、潤んだ瞳で杏寿郎を見つめ口を一文字に結ぶ。