第8章 お引越しとお宅訪問
「本当に……私がいて後悔しませんか?悲しくなったり……辛くなったり、しませんか?」
「後悔するならば、わざわざこんな事はしない。だから、何も心配せず戻っておいで。宇髄も君が戻るのを待っている」
更紗はようやく精神的な抵抗もやめ、腕で荷物のように抱えられながら杏寿郎の足にすがり付き嗚咽を漏らす。
「更紗を追い詰めるような言い方をしてすまなかった。俺もやり過ぎたと反省している」
ふるふると左右に首を振る更紗を腕から解放し、足からゆっくり引き剥がすと、その足の上に座らせる。
そうして後ろから少し体を預け、泣きじゃくり震える肩に腕を回して落ち着くまで待つ事にしたが……
「うぅ……ずびばぜん……もう大丈夫でず……」
もう迷惑をこれ以上かけまいと全然大丈夫じゃない声を発し、涙でぐしゃぐしゃになった顔を杏寿郎に向けてきた。
「ふむ……大丈夫……なのか??君がそう言うならばぼちぼち歩くか?」
こくりと頷く更紗を立ち上がらせ、手をしっかり握ってゆっくり歩き出すもずっと泣いたままで、転んで泣きじゃくる子供を親が手を引っ張って歩いている図にそっくりだ。