第8章 お引越しとお宅訪問
ようやく更紗の口から本音を聞き出した杏寿郎は腕の力は緩めぬまま、地面へと座り込んだ。
「やっと聞けた……君は本当に頑固者だな。こうと決めればそれを達成する為の努力を惜しまない……出来るならばこんな事にこれから努力しないでくれ」
まだ腕から逃れようと抵抗をしていた更紗だが、杏寿郎の言葉にそれをやめ黒い笑顔がなくなった顔を見つめる。
「やっと……ってどういう事?」
「あぁ……あの話をした後、君が家を飛び出すことは俺も宇髄も容易に想像していた。だが説得しても本音を言わんだろうし、1度更紗の感情を暴発させ、本音を聞き出そうとした結果がこれだ」
始めから全て行動や感情を読まれていたことに更紗は顔を赤くして、地面に着いている自分の腕に顔を押し当て涙を流す。
「どうして……そこまでして下さるのですか?私がいると、杏寿郎君はご家族とも離れて暮らさなくてはならなくなるのですよ……」
それが更紗の1番の気がかりだったのだろう。
せっかく打ち解け幸せな家庭に戻ったのに、それを自分が引き裂くような事をしたくなかったのだ。